ディアーディアー
屋久島に移り住んだあと、日常的に鹿を見かけるようになって、「鹿の子模様」というのが子鹿だけでなく成獣にも同じように現れるのだと認識した。それまでは文字通り、子供の鹿だけのものだと思い込んでいたのだ。
夏毛の鹿に現れるこの模様は、木漏れ日に似せて外敵から身を守るための保護色だと言われている。だから森が薄暗い色になる冬の間の鹿にはこの模様が無いのだと。
また、鹿の子模様は日本の伝統的な文様としても有名だ。丸に白点の単純な図柄がベースになり、着物の文様などとして染め込まれる。鹿は神の使いだとも言われ、古くから日本人に馴染みのあった動物なのだろ。
鹿が神の使いであるということの由来は、春日大社に祭られている武甕槌命(たけみかづちのみこと)が奈良の地に白鹿に乗ってきたことだとされている。
大国主神(おおくにぬしのかみ)に国譲りを迫った武甕槌命は十掬の剣(とつかのつるぎ)を波の上に逆さに突き立て、その切っ先の上に胡坐をかいて談判をしたという。すんなりと国譲りを受け入れなかった建御名方神(たけみなかた)は結局勝負に敗れ科野国の洲羽の湖で降伏した(諏訪大社)。これによって国譲りがなったとされている。