流れる星は生きている
冬季に撮影で山行すると、多くの時間を天気待ちに費やすことになる。時には稜線でツエルトを被りながら寒風に耐え、状況の好転を待っている。そんな時の相棒は携帯ラジオ
だ。イヤホンを耳に突っ込み、流れてくるプログラムに耳を傾ける。山で安定して聞けるのは、やはりNHKのAM放送。地上にいるときはいつもFM放送を聞いているので、山に行った時だけ聞いている。
AMとFMは、聴者層を意識してと思うが、それぞれ特徴がある。AMラジオには、FMラジオにない特徴があり、情報を得ることができる。今回ある番組に、藤原咲子さんが女性アナウンサーとの対談で出演していた。
咲子さんは藤原寛人(新田次郎)、藤原ていさんご夫妻の長女。戦後ベストセラーになった、ていさんの著作「流れる星は生きている」についての対談だった。
「流れる星は生きている」は、終戦間際の満州からの引き揚げを、実体験を元に描いている。対談はその本についてのものだったのだが、山から降りて来た僕は、どうしてもその本を手にとってみたくなり、Amazonに注文した。そうして届いた本を一気に読んでしまった。
物語は昭和二十年八月九日の夜十時半ごろ、新京(長春)から始まり、昭和二十一年九月中旬、長野県の上諏訪駅に到着したところで終わる。内容についてここで多くを語る積もりは無いが、歴史の事実を正確に捉えるためにも、こうした本はこれからも読み継がれてゆく必要があると、僕は個人的に感じた。
また、今回「流れる星は生きている」を読んだことで、作家「藤原てい」のことを知り、「新田次郎」についても少しその背景について理解が深まった。新田次郎は好きな作家であり、幾つか著作を手にとっているのだが、その中でもお勧めは「劒岳―点の記」だ。いっとき絶版になっていたようだが、映画化され今夏公開される運びとなったことから復刻されたようだ。映画と併せ、こちらもお勧めなので、山岳ファンの方には、ぜひ手にとって読んでみてもらいたい。
蛇足だが、映画には篤姫で活躍した宮崎あおいさんと小澤征悦さんも出演している。