平石岩屋
撮影日:2009年1月15日
撮影データ:NikonD700+AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED(焦点距離24mm)
ISO200 F8.0 露出補正 -1/2 1/350sec 手持ち撮影
10日の早朝、白谷雲水峡から入山した。予想していたより雪の降りは激しく、時折雷鳴も轟く。トロッコ軌道には既に30cmの積雪があり、歩行スピードは上がらない。17:00ギリギリに高塚小屋へたどり着く。その後、天候の回復を待って高塚小屋で待機。14日の午後に新高塚小屋へ移動し、15日の早朝から稜線を目指した。
しかし、高気圧の足が遅く天気は回復せず。雪は深く登山道にはアセビ、ハイノキ、シャクナゲなどが雪を被って頭を垂れ、覆いかぶさっている。場所によってそのスペースは高さ50cmほどしかない。こうなるとザックを担いだままそこを通過することはできず、ザックを降ろして、橇のように滑らし、自分は匍匐前進。そうでなければ、30kgのザックを担いだまま膝を折ってそれらをやり過ごす。絡みつく潅木を力任せに振り切ろうとしても、樹木の枝はしなやかにしなり、余計に体力を消耗するだけ。結局、新高塚小屋から平石岩屋まで7時間も掛かってしまった。
平石岩屋でこれほどの雪を見たのは初めての経験だった。昨年も厳冬期に何度もここまで来たのだが、今回の雪はそれとは一線を画す。平石岩屋から先、真っ白な雪原にルートは確認できず。記憶を頼りに歩き出したが、途端に吹雪がひどくなり、ホワイトアウト。自分のトレースも見る間に消えてゆく。「ここは進んではダメだ」と思い、踵を返して平石岩屋まで戻った。
何年かに一度、屋久島の冬山では死亡事故が発生している。今回その理由が良く分かった。屋久島の冬山のコンディションの激変は普通ではない。一つ判断を誤れば、それは「死」に直結するのだ。それを、今回痛いほど感じた。僕はこれ以上進むのを断念した。