苔生す大岩
撮影日:2008年8月21日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離15mm)
ISO100 F19.0 20.0sec 露出補正-1.0 PL使用 三脚使用
強い雨の日、誰も来ない深い森の中を一人でアングルを探して歩きまわる。風景を写真として切取るという事は、実際やってみると案外難しいものだ。
目の前の風景に「何か」心惹かれるものを感じ、背中のカメラサックを降ろして三脚を立て、カメラを取り付けてファインダーを覗いてみる。しかし、なぜだかファインダーを通して見た風景には、最初に感じた「何か」が既に失われてしまっている事が多い。そんな時は撮影をあきらめ、また機材を仕舞って再び歩き出す。こんなことを延々と繰り返しながら写真を撮っている。書いてしまうとあっけないが、実際には相当手間ひま掛かることだし、体力も必要になる。特に雨の中の撮影は精神的にもタイトだ。
しかし、それでも雨の日に撮影に出掛けてしまうのは、やはりそこに素晴らしい風景との出会いが待っているということを、経験的に知っているからだ。この日は川沿いに苔生した丸い二つの大岩を見つけた。その間から水が流れ落ちている。不安定な足場にしっかりと三脚を立て、心を落ち着けてフレーミングを決め、シャッターを切る。こういう景色は、撮れそうで、なかなか撮れないものだ。
しかしまぁ、大きな荷物を背負って、雨の森の中を何時間も彷徨うというのは、傍から見たら少し不可思議な行為だろう。誰かに出会って、「何を探しているのですか?」と聞かれも、その「何」をうまく説明することは難しい。だからか、こうした撮影をする時は、人の誰も来ない深い森の中へ、自然と足が向いてしまう。