焼野三叉路から
撮影日:2008年1月3日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離10mm)
ISO1600 F11.0 1/125sec 露出補正+1.0 手持ち撮影
平石岩屋手前の斜面、一部クラストしている。ロープも凍りついていたが、かろうじて持ち上げることができたので掴み、それを補助に高度を稼ぐ。こんなところで足を滑らせたらそのまま下までまっしぐらだ。とにかく慎重に。アイゼンの爪が良く効いてくれた。
平石から先、登山道は完全に雪に埋まっている。しかしヤクシマダケとの境、かろうじてルートらしきものが確認できる。先行した登山者もなんとかそれを辿って進行しているようだったが、ショートカットなのか?ときおりトレースがルートを外れる。迷って戻ったりした跡もあり。随分苦労しているようだった。
そうして焼野三叉路まで来た。先行した登山者は宮之浦岳へ向かったようだ。永田岳方面、誰も行った跡が無い。そして昨日のトレースはキレイに消えている。雪面は真っ白だった。意を決して歩を進めるが雪が深い。いきなり腰まで沈む。高塚小屋で同宿になったO氏が「輪かんを貸しましょうか?」と言って呉れたのを断ってしまったのを後悔した。こんなことなら借りてくるんだった、と。
しばし立ち止まって逡巡した。行くべきか?行かざるべきか?
その時だった、イキナリ濃い霧が風で流されて太陽が姿を現した。霧はみるみる晴れてゆく。「あっ!」と思って光の方向を見ると目の前に真っ白になった宮之浦岳が姿を現した。僕は最初ポカンと口を開けて呆然とその光景を見ていた。ただ美しかった。
しかし、直ぐに気がついてザックを置くとカメラを取り出した。だが宮之浦岳はまともに太陽を背負っている。写真に撮るにはどうにも具合が悪い。手持ちで何カットか切ってみたが、こればかりはどうにもならかった。
しかし、僕はここで行くと決めた。ならば光待ちしている余裕は無い。この時点で12時半だった。焼野を独りでラッセルしながら、鹿之沢小屋までたどり着かなければならない。僕は早々にカメラをザックに仕舞ってそこから出発した。