凍てつく照葉樹林
撮影日:2008年1月2日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S17-85mmF4.5-5.6 IS USM(焦点距離85mm)
ISO200 F5.6 1/10sec 露出補正+1.0 手持ち撮影
新年二日の縄文杉デッキ。年末から降り続いている雪が林床にずんずんと積もり、流れ込んだ寒気が木々の葉を白く凍りつかせていた。こんな中でも常緑の照葉樹は葉を落とさない。しかし纏わりついた氷の重みで、全ての葉がだらんと垂れ下がっていた。
吹雪き荒れ狂う暗い森の中でその様を眺めていると、そこには一種の不気味さが漂う。それはまるで木の枝に無数のコウモリがぶら下がっているように見えた。そうでなけば凍り漬けにされた鳥が逆さまにぶら下がっているようだった。そして、何かの小説でこんな風景を読んだことがあると思った。
ゆっくりと深い記憶の淵に手を突っ込んで、その辺土をなぞっているうちに、一冊の赤い表紙の単行本が頭に浮かんできた。「ノルウェイの森〈上〉」だ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
そして僕は柳の夢を見た。山道の両側にずっと柳の木が並んでいた。信じられないくらいの数の柳だった。けっこう強い風が吹いていたが、柳の枝はそよそよとも揺れなかった。どうしてだろうと思ってみると、柳の枝の一本一本に小さな鳥がしがみついているのが見えた。その重みで柳の枝が揺れないのだ。僕は棒きれを持って近くの枝を叩いてみた。鳥を追い払って柳の枝を揺らそうとしたのだ。でも鳥は飛び立たなかった。飛び立つかわりに鳥たちは鳥のかたちをした金属になってどさどさと音を立てて地面に落ちた。
村上春樹著 ノルウェイの森〈上〉P236より抜粋
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
凍てつくユズリハやヤマグルマ、そしてハイノキなどを眺めながら、一人そんなことを考えていた。