新春の縄文杉
撮影日:2008年1月3日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離16mm)
ISO200 F8.0 1/1sec 露出補正-0.5 三脚使用
年末年始、僕は世界遺産屋久島のシンボルとなっている縄文杉の近くの小屋に待機していた。この冬一番の寒気が日本列島に流れ込んでくるというニュースを聞き、きっと山の上に雪が降るだろうと思ったのだ。ありがたいことに、例年になく早めに年越しの準備を済ませていた(年賀状も20日には全て出してしまった)ので、直ぐに1週間分の食料をザックに詰め込んで山へ上がった。30日の朝のことだ。
トロッコ軌道を歩いている時は未だ雨だったが、ウイルソン株を過ぎるあたりでそれがミゾレに変わり、大王杉のあたりで雪になった。しかしそれは南の島に降る溶け易すく頼りない雪だった。高塚小屋に着いたとき、僕は装備ごとびしょ濡れだった。
元旦には天候が回復して来るのだろうと予想していたのだが、それはとんでもない見込み違いだった。高塚小屋と周囲の森はまともに北西の季節風を受け、ゴーゴーと鳴っていた。そして今度はそこに本格的な雪が混じる。屋久島に降る雪は信州育ちの僕が知っているそれとは全く違っていた。雪というよりそれは、細かな氷のつぶてだ。風の吹く場所ではその風にのって斜めに、風の無い場所では垂直に無数の筋を引くように降りつけていた。僕は思った。「これは雪ではない、氷のスコールだ」と。
紅白歌合戦はシュラフに潜り込んだままイヤホンを耳に突っ込んでラジオで聞いた。実業団駅伝の結果や箱根駅伝のニュースも。しかし天候が回復する様子が無い。そうして迎えた3日の朝、一人カメラを持って縄文杉デッキへ向かった。雪は止んでいたが東の空は真っ白だった。今日もまた日の出を拝むことはできないのだろうか?と僕が諦めかけたその瞬間、本当にその瞬間だけ東の空が割れた。
縄文杉に朝日が当たったのは僅か30秒ほどだったろうか?ぼくは必死でシャッターを押したが、10カット抑えるのが精一杯だった。ベストの状態ではないが、今年初めての朝日を受けた縄文杉を、その場でたった一人、僕だけが見ていた。