ローソク岩展望台
登山道で撮影を繰り返しながら、僕は「ローソク岩展望台」を目指していた。
登山地図(山と高原59 屋久島・宮之浦岳)を見ると、永田岳のピークから鹿ノ沢小屋への下りの中間地点に、ローソク岩展望台がある。事前に色々調べた結果、ここは文字通りローソク岩を眺めるのに最適な場所なので、ここから撮影をやりたいと思っていたのだ。
しかし、このコースが初めてであったことと、濃いガスが湧いて、永田岳やローソク岩をその向こうに隠してしまったことから、展望台の位置を特定できないまま1時間ほど下ってしまった。
そのとき吹き上げられた風に押し流され、永田岳方面のガスが切れた。すると、事前に写真集などで見ていた岩展望台からの景色より、だいぶ下ってしまったことに気がつく。
その位置にザックをデポして機材を抱え、元来た登山道を戻って、岩展望台の場所を探す。僕はてっきり標識かなにかが出ているものと勘違いしていたのだが、どうやら標識は無いようだ。
永田集落の方から湧くガスは濃く、永田岳はまた姿を隠してしまう。しかし、幸いなことに風が強かったので、時折ガスの晴れるときがあり、そのときに垣間見えるローソク岩の形を、記憶にある展望台からの景色と照らし合わせて場所を探しまわった。
そのとき、登山道脇にある大岩のクラックに根を突っ込んで花芽をつけているヤクシマシャクナゲの株をみつけた。斜めになった天面は2畳ほどの広さがある花崗岩の大岩。その真ん中に走った幅2cmほどのクラック(割れ目)からシャクナゲが生えている。川原で見たサツキもそうだったが、屋久島で見つける小さな風景には、時々本当に驚かされる。雨がこんなところにも生命を育んでいるのだろうと思う。
大岩のクラックから生えていたシャクナゲの株
撮影データ:EOS-20D+EFS-10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離22mm)
ISO800 F5.6 1/400sec 手持ち撮影
岩の向こうは断崖絶壁なので、落ちたら大怪我だな、と思いながら、岩のフチに足先を掛け、腹ばいになって大岩の上に乗り、手持ちでその株を何カットか撮影した。当然三脚を立てられる場所ではないし、非常に無理な体勢(ほぼノーファインダー)で撮影をやっているので、ISO感度を800まで上げてシャッタースピードを稼いでいる。こういう撮影のときに、ISO感度をワンタッチで変えられるデジタルは重宝する。銀塩カメラだと、ちょっとこうはいかない。
その撮影をやっていると1度永田岳方面のガスが切れ、ローソク岩も姿を現した。その景色を見て、どうやらこの辺がローソク岩展望台だと確信する。直ぐ後ろにあった大岩の上に登り、三脚をセットして再びガスの切れるのを待ち撮影をした。この場所もやはりシャクナゲが満開で、文字通り風景に花を添えてくれた。
ローソク岩展望台よりローソク岩を望む
撮影データ:EOS-20D+EFS-10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離22mm)
ISO100 F11 1/30sec 三脚使用