岩抱きの洞杉(富山県)
![](http://fotoguide.jp/wp-content/uploads/2024/12/004_DSC9206.jpg)
樹齢約1000年/樹高28m/幹周約15.6m
ILCE-7RM4+SEL1635GM
その洞に大転石を抱え込み、北陸の重い湿雪に耐え抜いて怪異な姿へと成長を遂げた最大の洞杉。(富山県 片貝川)。
岩抱きの洞杉(富山県)
佐渡取材のあと新潟市から鉄道を使って富山市を目指した。日本海沿岸を走るこの路線はJRと地域の第三セクターを乗り継いで5時間半の行程となる。早朝5時に新潟を出発した後、通学する水産高校の学生に混じって一両編成の電車に乗りながら富山駅に着いたのは10時を過ぎていた。そこからはレンタカーを使って洞杉群駐車場を目指した。
駐車場に着くと入り口に「本日熊目撃」の不穏な看板があった。熊鈴の準備は無かったのでスマホを最大音量にして音楽を流しながら徒歩で洞杉まで行った。
岩抱きの洞杉は林道から入って直ぐのところにある。折から小雨になって撮影には絶好の柔らかい光だ。三脚を据えてカメラを覗きこむが、周囲が見えなくなると途端に熊のことが気にかかる。スマホの音楽はリピートにし、時折自分でも大きな声を出しながら撮影を続ける。周りに誰もいないから良いようなものだが、誰かに目撃されたら随分と可笑しな様子だった思う。
しかしアングルを微調整しながらカメラを覗き込むうちに周囲の雑音が消えて熊への不安も遠のいた。構図がゾーンに入ったのだ。ヨシ、と小さく頷いて2秒レリーズをかけた。
シャッターが落ちた後にEVFでプレビューを見ながら、この写真は誰かにちゃんと見せたいと思った。写真展をやろう。この写真を撮ってその想いをより強くした。