ベビーディアー
西部林道で、まだ足許の覚束ない小鹿に出合った。母鹿のあとを、まるで磁石で吸い付いたみたいについてまわる。
夏の季節にここまで幼い小鹿に出合うことは稀だ。レンズを標準ズームに付け替えて、撮影チャンスを伺う。動物の撮影は、いかに被写体の動きを予測して先回りできるかが、カギになる。後追いばかりだと、どうしても後ろ姿しか撮れないからだ。
かと言って不用意に彼らの行く手を遮るように手前に立ちはだかると、当然のように行き先を変えてしまう。つかず離れず、地形を見ながら、自然に合流できる地点を探す。
がけ地の狭くなったところをその母子は通過しようとしていた。先回りした僕は、左手で木の幹をつかみ、右手で持ったカメラを差し出し、背面液晶に僅か見える構図を頼りに、ノーファインダーでそこを通過する小鹿を撮った。
カメラのオートフォーカスは優秀で、小鹿の瞳付近にキチンとピントを入れてくれた。便利な時代になったものだと思う。