へたの矢筈に
梅雨空から一転して満点の星空となった22日の晩、多くの方がこのネオワイズ彗星を撮影してSNSにアップしていた。情報を取りこぼしていた僕は翌23日の夕方にカメラを車に積んで島の北を目指した。
下調べゼロで出かけたので、小瀬田まで来たところで一度車を止め、ライトを消して北の空を眺めて見た。するとそれは北斗七星の下に肉眼でもハッキリと見えた。方角はだいぶ西だ。屋久島で撮影するなら、何か手前にそれと分かるものを写しこみたい。何が入るだろうか?しばし想いをめぐらす。
白谷線から宮之浦の集落はどうだろうか?そう考えて白谷線を駆け上がった。しかしハズレ。雲の展望台から眺めた彗星は、集落よりずっと西に長い尾を引いていた。
ならば志戸子か一湊だと考え、今度は白谷線を駆け降りる。志戸子に差し掛かったが撮影ポイントが見つからない。ええーい、ならば一湊と思って更に先へ進むと、元浦から矢筈半島の先に尾ひく彗星が見えた。
車をバックさせ、撮影ポイントに三脚を立てる。明るい55mmが画角的にすっぽりはまった。半段絞って8秒の露光。よし!星も流れていない。岬の先に輝く灯台の明かりと、手前の釣り人のライトが画面の中でいいアクセントになってくれた。
1カット。とにかく1カットでいいから地道に撮ってゆこうと思った。
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ちなみに、地元一湊の方々は、矢筈半島の手前の山を「へたの矢筈」、半島先の山を「沖の矢筈」と呼び分けているそうです。「ネオワイズ彗星」はこの日「へたの矢筈」に向かって長い尾を引いていました。