西部のガジュマル
ガジュマルは亜熱帯~熱帯地方に分布するクワ科イチジク属の常緑高木であり、この樹のあることが、屋久島が亜熱帯に属しているという一つの証明になっている。
ガジュマルの名の由来は、幹や気根の「絡まる」姿が訛ったという説がある。それらは合着しながら奇怪な姿へと成長してゆく。その様から榕樹という漢字が当てられている。
屋久島の世界自然遺産登録エリアである西部林道の森には、いくつか特徴的なガジュマルがある。この写真はそこにある樹の一部分を切り取るようにして撮影したものだ。
もう10年近く前になるが、第16回前田真三賞を受賞された奈良県の松尾清嗣さんを訪ねたことがある。僕もその公募にエントリーしていたのだが、クオリファイは通過したものの本戦では歯牙にもかからず敗退した。そして受賞した松尾さんの作品「やまと里景色」の意図を当時の僕はまったく読み解くことができなかった。
つまり前田真三賞(30枚の組写真)という公募が何を意図して評価しているのかを、僕はまったく理解できていないということになるので、これではダメだと思って松尾さんに教えを請いに奈良県まで行ったのだ。
そうして1日松尾さんからレクチャーを受けるなかで、特に印象に残っていることだが、アングルを探すときの姿勢として360度全てからの可能性を考えてみるということを松尾さんは仰られた。これに類することは自分ではできている積りだったのだが、360度という具体的な言葉で示され、実際に松尾さんがアングルを探す現場を見せて貰った結果、当時の自分が甘かったと思い知ることになった。
この写真は、そんな松尾さんの教えが生きた結果だと思っている。