イルカ
撮影日:2010年2月22日
撮影データ:NikonD70+Ai AF Zoom Nikkor 28-200mm F3.5-5.6D(IF)(焦点距離200mm)
ISO200 F5.6 1/160sec 手持ち撮影
屋久島へ遊びに来た家族を伴って屋久島灯台を見学に行った時のこと、岬の先に小さな波しぶきが幾つも移動してくるのを見つけた。「何だろう?」と不思議に思いながら目を凝して良く見ていると、白い水しぶきと一緒に黒い三角形の背びれが見えた。「イルカだ!」
屋久島の沖合いにイルカが現れるという話は聞いたことがある。しかしそのものに遭遇したのはこれが初めて。イルカは30頭ほどの群れになって波間を小さくジャンプしながらゆっくりとこちらに近づいてくる。「写真を撮ってくる」と言って僕は家族が持っていたカメラを引っ手繰るようにして受け取り岬の先へ走った。
イルカの群れは屋久島灯台のおよそ200mくらい先を北から南へ向かって移動して行く。ズームのテレ端が200mしかなかったので目一杯それを延ばしてファインダーの中を横切る群れの姿を追った。イルカたちは小さく、そして軽快にジャンプしながらリズムをとって踊っているように見えた。僕は興奮して何枚もシャッターを切った。
星川淳さんの屋久島の時間(とき)―水と緑の12か月の中に屋久島南部の岬でイルカの大群に遭遇するというエピソードが出てくる(4月 夢時間 数え切れないほどのイルカが浮上のたびに濡れた背中を光らせて西へ向かってゆく P62)。
僕にとってこの本は、屋久島への憧れを深めてゆく過程でとても影響を受けた本だ。通いで撮影をしていた当時、毎晩枕元においたこの本の活字を目で追いながら、行間から屋久島の匂いを感じ取ってそれを吸い込み屋久島へ想いを馳せた。そして、この本に幾つも出てくる屋久島らしいエピソードの中でも、このイルカのところは僕にとって取分け印象深いものだった。そして、いつか屋久島の沖合いを泳ぐイルカを見たいと思っていた。それが今日叶った。
屋久島に暮らして今年の5月で丸三年経過。かつて夢見た「屋久島の時間」に出てくるエピソードの幾つかは、既に僕の日常になりつつある。しかし、しかしである。僕が三年掛かって目にしたものを、我が家族は来島二回目で目撃した。そう思うと、ちょっと悔しい気持ちも沸いてきた(笑。