白谷雲水峡に佇むヤクシカ
撮影日:2008年3月15日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S17-85mmF4.5-5.6 IS USM(焦点距離38mm)
ISO800 F4.5 1/15sec 露出補正-0.5 三脚使用(トリミング80%)
8日には縄文杉まで雪を撮りに行っていたというのに、10日過ぎたら急に季節が春に変わった。僕の住む小瀬田地区は屋久島の中でも特に冬の間は風の強い場所で、キッチンの窓から見える海面は連日白波が立って真っ白だった。それがどうだろう、まるでスイッチを切ってしまったように静かに凪ぎ、日が射すとコバルトブルーに染まる。冬はある日を境に、もぎ取られたように無くなってしまった。
15日、思い立って白谷雲水峡へあがった。途上、県道白谷線で咲き始めのサクラツツジを目にした。そして眼下に見える森の樹冠はどこも芽吹きに備えてうずうずしている。一週間前、白谷雲水峡にわずかあった雪はきれいに消え、やはり森の中では春を待ちきれない生命の息吹が漏れ出してきていた。ミソサザイがとてもいい声でさえずっている。僕は、うっとりしながらその鳴き声に聞き入っていた。
すると、脇から動物の視線を感じた。ゆっくりそちらに顔を向けると、1頭のヤクシカがこちらを見ていた。僕は三脚に据えたままにしてあったカメラのシャッターを静かに切った。ヤクシカは、依然そのままそこに佇んだままだった。