白く凍りついた森
撮影日:2008年2月16日
撮影データ:CanonEOS40D+EF-S10-22mmF3.5-4.5USM(焦点距離10mm)
ISO200 F8.0 1/500sec 露出補正+0.5 手持ち撮影
2月13日は高塚小屋泊、14日からは新高塚小屋へ移り天候の回復を待っていた。携帯電話で天気図を見ながらラジオの天気予報を聞き「明日こそは晴れる」と思い、朝、暗いうちから日の出時刻に合わせて平石岩屋まで登ってゆく。しかし高気圧は大陸から東シナ海へ出たところで停滞。屋久島は依然高気圧の淵にあり、天気は回復しない。
しかし、と思う。結果がどうであれ、現場にいないと写真は撮れない。結局のところ行ってみるしかないのである。事実、16日は午前9時前後にほんの一瞬だけ青空が覗いて宮之浦岳が姿を現した。そういうこともあるのだ。雪の状態はまずますだった。
新高塚小屋から平石岩屋までの間、連日歩いているのは僕と鹿だけ。彼らは省エネなのか僕のトレースを利用して登山道を行き来している。しかし午後天気が崩れると、そのトレースも翌朝には消えている。日に日に深くなる雪の登山道を朝暗いうちから、ヘッドランプの明かりだけを頼りに一人でラッセルしていると、時々自分が何をやっているのか分からなくなることがある。しかし、繰り返しになるが、それでも現場にいないと写真は撮れない。明日こそは天気が回復すると信じてまた早朝三時に起きて小屋を出てゆく。しかしこの日も晴れなかった。
諦めて平石から小屋へ戻る途中、凍りついた森にレンズを向けた。全てが白い。思考もだんだん真っ白になってゆくようだ。山に入って5日目の夕方。シュラフもだんだん湿気てきて保温力を失っている。テントシューズを履いてもなかなか足先が温まらない。小屋の中で朝目が覚めるとペットボトルの水が半分凍っている。体力的にもだいぶ厳しくなってきていた。