岩倉の乳房杉(島根県)
樹齢約800年/樹高40m/幹周11m
ILCE-7RM4+SELP1635G
大満寺山から崩れた岩盤上の森に悠然と立つ岩倉の乳房杉が朝日に紅く染まる。他に類を見ない下垂根が特徴的だ(島根県 隠岐島)。
【岩倉の乳房杉】
屋久島でいつも縄文杉を見ているカメラマンとしてぜひ一度見ておきたい杉があった。一本は佐渡の金剛杉。そしてもう一本が隠岐島にある岩倉の乳房杉だった。
伊丹から空路で隠岐へ入ったあと、直ぐ最高峰である大満寺山の取材に出かけ、ルート上にある乳房杉を訪れた。鳥居を挟んで杉と対面し、他に類を見ないその特異な造形に目を奪われた。特徴的な下垂根は大満寺山から崩れた岩盤が重なる地形のため必要な水分を地中から得ることが難しく、また周辺の湿度が常に高いことから発達したと考えられている。
好天で太陽が天頂にあり、光線状態が良く無かったが抑えを撮影してそのまま山取材を続けた。なにしろ滞在時間はほぼ24時間しかないのだ。予定したことを粛々と消化してその日を終えた。
翌日早起きして撮影に向かう。乳房杉の気根が空気中の水分を得るために発達したとするならば、ベストな状況は朝霧か弱い雨なのだが予報は晴天。ならば少しでも光の柔らかい早朝に撮影しようと考えたのだ。
現場に到着すると先客がいた。同じことを考えたカメラマンがもう一人いたのだ。松江から来たというその若い男性はベルボンの三脚に据えたオリンパスのカメラで一頻り撮影を終えると僕に場所を譲ってくれた。僕は彼に礼を言って一通り撮影をした。
しばらくすると光が変わった。紅い朝日が森の中に差し込んできたのだ。お互い一度アングルを見ているので、迅速に場所を交代しながら撮影を続けた。カッコウやアカショウビンが鳴き交わす気持ちの良い森の中に、静かに二人のシャッター音が響いた。当初イメージしたものとは少し違ったが、隠岐島では本当に気持ちの良い撮影ができた。